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一般財団法人 自然環境研究センター

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2023年度インターンシップ

2023年度のインターンシップ研修は、9月13日~15日で開催しました。今年度は4名の学生に参加していただきました。
本研修は、当センターの社風や業務内容・方針の理解と環境保全に関する実践的知識やその課題解決に必要な意欲、考え方などを身に着けてもらうことを目的としています。
今年度は、獣類の保護管理、希少種保全、外来生物対策をテーマとして座学と体験実習を行いました。①座学では、千葉県の鳥獣保護管理に関する業務の概要と獣類のカメラトラップによる調査方法、小笠原諸島における希少種(陸産貝類)保全、対馬市における外来種(ツマアカスズメバチ)対策に関する業務や課題を学習し、②体験実習では、陸産貝類の飼育作業や外来ハチ類の同定作業、イノシシの生息状況調査を体験しました。体験実習後は、データ解析や③ワークショップでの発表により実習の理解を深め、④インターンシップ全体を通した振り返りを行いました。
短い期間でしたが、本研修に参加した学生からは、積極的な意見や質問があり、自然環境に関する業務や環境保全のあり方等について学んでいただけたと思います。

 

➀座学

当センターの体制や業務内容、ニホンジカ・イノシシといった獣類の保護管理、小笠原諸島の陸産貝類を事例とした希少種保全、外来ハチ類を事例とした外来種対策について、現場で活動する職員からの説明がありました。

 

写真:座学(当センターの業務概要等の説明を受けるインターンシップ参加者)

座学(当センターの業務概要等の説明を受けるインターンシップ参加者)

 

②体験実習

【希少種保全と外来種対策研修】

室内実習として、小笠原諸島に生息する陸産貝類の飼育作業と、対馬市に設置したトラップで捕獲回収された外来ハチ類(ツマアカスズメバチ)の同定作業を実施しました。
陸産貝類の飼育作業では、同定に関する知識、種や性質に合わせた飼育手法の開発、基本的な飼育作業について学び、希少種を飼育下で保護増殖する重要性や課題についても作業を通して理解を深めていただきました。
外来種対策研修については、同定資料を用いて分析作業を体験してもらいました。正確な同定作業のほか、現場から帰って行う膨大なサンプル処理やデータ整理作業の重要性、調査データから見える傾向の有効活用等、外来種防除の現状と課題について考えてもらえたと思います。

 

写真:ツマアカスズメバチの同定作業の体験

ツマアカスズメバチの同定作業の体験

 

【獣類の保護管理研修】

野外実習では千葉県をフィールドとして、イノシシの生息状況調査を体験してもらいました。生息状況調査では、痕跡調査と自動撮影カメラによる調査を体験してもらい、調査の目的に応じて調査方法や設計を工夫する重要性を学んでもらいました。
実習の翌日は、自動撮影カメラで撮影された画像処理作業を行い、動物種の判別、撮影データの分析方法、密度推定に活用できるカメラ調査の方法など、カメラ調査の活用方法や目的に合った分析方法について幅広く学んでもらえたかと思います。

 

写真:イノシシ痕跡調査の体験

イノシシ痕跡調査の体験

写真:自動撮影カメラ設置体験

自動撮影カメラ設置体験

 

③ワークショップ

インターンシップ参加者全員が1グループとなって、ワークショップを行いました。体験実習を行ったテーマなども踏まえ、日本における野生生物の保護管理に関して、希少種や外来種、生態系、人為の影響、環境教育等いくつかの視点から、その理想、現状、課題などについて、インターンシップ参加者がそれぞれの意見を出し合いました。問題点、課題点に対して、自分たちで取組める解決策などを考えることにより、野生生物の保護管理について理解を深めることができました。

 

写真:ワークショップの様子

ワークショップの様子

 

④フィードバック

今年度のインターンシップでは、研究テーマが未定の学部3年生から、動物行動学、生態学、腸内細菌叢など様々な分野を専攻する大学院生に集まっていただきました。
振り返りでは、獣類の保護管理の現場を見たり、陸産貝類や外来昆虫などに触れたりすることで、生物多様性保全についてより具体的にイメージを持てたといった意見があげられました。また、大学で行う研究とは異なり、業務では期限内にとりまとめるための効率性やチームワークが重要であること、結果に対する責任感の重さなどについても学んでいただけたようです。

 

 

参加者の声

東京農業大学地域環境科学研究科1年

環境保全のための調査・研究の実際に興味があり、インターンシップに参加しました。
小笠原陸産貝類の域外保全としてマイマイの飼育を実際に体験し、域外保全の難しさ、大変さを強く感じました。外来種対策としてはトラップで捕獲されたスズメバチの同定を体験し、罠をかけた後の処理の大変さを学びました。野外実習では、イノシシのカメラでの調査や痕跡調査を体験し、現状の把握やそれを個体数管理などにどのように繋げるかなど、現場での視点を学ぶことが出来ました。
三日間のインターンシップを通して、生きものに真摯に向き合い、試行錯誤をしていくことが重要だと思いました。また、職員の方の情熱に触れ、改めて環境保全にかかわりたいという気持ちが強まりました。

 

東京理科大学大学院創域理工学研究科1年

私は絶滅危惧種についての研究を行っており、自然環境の保全に興味があったことから、実際の業務を体験できるインターンシップに参加しました。希少種の保護や外来種の同定、害獣の痕跡調査等を体験することで、これらの業務に携わる者としての責任感や難しさを実際に感じることができました。また、体験を通し、自分自身の野生生物の保全や環境問題に対する意識も変化したと感じています。自然環境の保全の取り組みについて具体的に学ぶことができ、充実したインターンシップとなりました。

 

新潟大学大学院自然科学研究科1年

私は、今回のインターンで希少種の保全や外来種問題、獣害対策などの様々な興味深い内容を学び、実際に肌で体験することで人と自然が共生する環境を創造することが重要であると感じました。実際にフィールドで行ったイノシシの痕跡調査では、住宅地からすぐ近くの環境でこのような問題が起きており、人との接触や共生について、さらに考える必要があると感じました。日本は自然が豊かな国であり、多くの固有種や生態系が維持されている中で、都市化や外来種の問題を解決することは、人と自然の共生を考えるうえで重要であると感じました。また、自然環境研究センターで業務に携わっている方たちや参加者などの様々な考えや意思などを知ることができ、とても貴重な経験を得ることができました

 

琉球大学農学部3年

人と自然が共生していく社会に興味があり、今回のインターンシップでは「人と自然の暮らし」を自分の中でテーマにして参加しました。インターンシップを通して、保全・管理について今まで以上に明確なイメージを持てるようになりました。モニタリング調査や痕跡調査を通して、人の暮らしのすぐそばに野生動物がいることを知りました。そのために、個体数や分布域を把握して、増えすぎていたら捕獲して管理を行い、有効な方法か調査したり、今後種が存続できる程度か個体数を調整していく難しさを実感しました。ほかにも、希少種保全の難しさについても、絶滅がすぐそこに迫っている中で、飼育し守っていくことの難しさや、思うようにならない自然を相手にして工夫して最善の方法を見出していくことの難しさと興味深さを体感することができました。また、グループワークを通して、自分と学んでいる分野が違う方と交流することで、これまでなかった新たな視点や興味を持つことができ、とても有意義な3日間を過ごすことができました。

 

 

2019年度インターンシップ

2019年度のインターンシップ研修は、9月25日~27日の3日間で開催しました。今年度は多くの応募者の中から6名の学生に参加していただきました。
本研修は、当センターの社風や業務内容・方針の理解や、環境保全に関する実践的知識やその解決に必要な意欲、考え方を身につけてもらうことを目的としています。
今年度は、固有種の保全や外来種対策、鳥獣保護管理をテーマとして座学と体験実習を行いました。①座学では、小笠原諸島における陸産貝類の保全、関東港湾における外来アリ侵入防止、千葉県におけるニホンジカ・イノシシの保護管理に関する業務や課題を学習し、②体験実習では、陸産貝類の飼育作業や外来アリの同定作業、ニホンジカ・イノシシ生息状況調査を体験しました。体験実習後は、データ解析や③ワークショップでの発表により実習の理解を深め、④インターンシップ全体を通した振り返りを行いました。
短い期間でしたが、本研修に参加した学生からは、積極的な質問や意見があがり、自然環境に関する業務や環境保全のあり方等を学んでいただけたと思います。

 

➀座学

当センターの体制や業務内容、陸産貝類を事例とした固有種の保全、外来アリを事例とした外来種対策、ニホンジカ・イノシシの捕獲やモニタリング事業を事例とした大型哺乳類の保護管理について、現場で活動する職員からの説明がありました。

 

写真:座学(プロジェクト等の説明を受けるインターン生)

 

②体験実習

【固有種保全と外来種対策研修】

室内実習として、小笠原諸島に生息する陸産貝類の飼育作業と、港湾での外来アリ捕獲業務で回収されたトラップを用いたアリの同定作業を実施しました。
陸産貝類の飼育作業では、飼育個体の健康状態の確認、記録や給餌作業等を通して、域外保全の一環としての飼育を体験してもらいました。実際に作業をすることで、希少な生物を扱うことの責任や技術開発の必要性、域外保全における課題などについて感じてもらえたのではないかと思います。
外来種対策研修については、顕微鏡や参照標本等を用い、本格的な分析作業を体験してもらいました。この研修を通して、正確な同定作業のほか、調査データを有効に活用する事や侵入初期での防除の重要性など、外来種防除の現状と課題について考えてもらえたと思います。

 

写真:外来アリの同定作業の体験

 

【野生鳥獣管理研修】

野外実習では千葉県をフィールドとして、ニホンジカの糞塊密度調査やイノシシの痕跡調査と自動撮影カメラによる調査の実習を行いました。糞や痕跡を活用した痕跡調査と自動カメラ調査の2つの手法を学ぶことで、事業の目的に対してどんな調査手法を選択するか、調査の設計の考え方や現地での技術的な工夫について学びました。また、同じ調査手法でも、獣種の生態に応じた調査地の選択や、調査設計への工夫について、現場を視察することで、より理解が深まったと思います。実習の翌日は、自動撮影カメラで撮影された画像処理作業を行いました。野外調査の現場実習から調査データの集計作業まで、業務の一連の流れを体験してもらうことで、野外調査で得たデータをどのように野生動物の保護管理に活かすかについて、難しさや工夫の大切さを学んでもらえたかと思います。

 

上写真:ニホンジカの糞塊調査体験の様子、下写真:自動撮影カメラ実習

 

③ワークショップ

体験実習を行った3つのテーマについて、それぞれ2名1班となって各テーマの課題と対策を考えるワークショップを行いました。陸産貝類の保全では、陸産貝類の個体数減少の原因となっている外来種への対策が提案され、特にプラナリアに対して、効果的な対策やより多くの人に問題を理解してもらうための効果的な周知の仕方について様々なアイデアが出されました。外来アリ対策では、侵入を防止するための日本国内での対策に加え、輸入元である海外の港湾での対策についても提案がありました。鳥獣保護管理では、分布の先端地域での獣類管理について、捕獲事業者の役割分担や捕獲目標が具体的に提案され、それに対する捕獲事業者の役割分担やモニタリングが提案されました。各テーマの対策では、学生としての自分達が出来ることについての発表もあり、インターン生にとって専攻外の分野についても様々な意見が交わされワークショップが進められました。

 

写真:ワークショップの様子

 

④フィードバック

今年度のインターシップは、生態学などの基礎研究からジビエ活用などより実用に近い形の研究まで、様々なスケールの分野を専攻する大学院生に集まって頂きました。
振り返りでは、「研究と業務の差」や「専門外の人に対して結果を伝える能力」など、事業の目的に沿った調査の設計や結果のアウトプットに関する感想・意見が多数あげられており、体験業務をとおして大学で行う調査研究と事業の差について多くのことを学んで頂けたと思います。また、インターンシップ期間中は、異なる大学で異なる分野を専攻する学生同士が出会い意見交換を行うことで、お互いに刺激を受け学んでいる姿が印象的でした。

 

 

参加者の声

東京大学大学院農学生命科1年

日本の生物保全や防除に関する最前線での課題を、異なる専門分野を持つ学生と多角的な視点からディスカッションすることは大変有義で勉強になりました。自然環境研究センターでは、調査したデータから最終的に政策提言を行うということから、生態学や分類学の研究が世の中に還元されていくことのすばらしさや仕事のやりがいを強く感じて、自分の専門の研究テーマも世にどのように還元していくことができるかを意識する良いきっかけとなりました。インターンシップの面倒を見てくださった研究員の皆さんのとても分かりやすい説明と指導に助けられ、最初から最後まで楽しい時間でした。

 

京都大学大学院農学研究科1年

環境保全や野生鳥獣の保護管理に携わる仕事がしたいと考えており、実際の業務を体験したいと考え、また環境保全のプロである職員の方々のお話を伺いたいという思いからインターンシップに参加させていただきました。
シカやイノシシの痕跡、糞塊調査とその後の職員の方々のご説明から、現場の調査が捕獲計画や保全事業にどう結び付くかということを有機的なつながりとして理解することが出来ました。また、環境保全の各分野のプロフェッショナルである職員の方々のこれまでの業務のお話が大変面白く、今後の研究生活への刺激になりました。
今回のインターンシップを通じて「将来は鳥獣の保護管理に携わりたい」という思いが一層強くなり、非常に有意義な3日間でした。

 

東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科1年

私は学部生時代にサークルの先輩が小笠原諸島で自然環境保全の仕事をしていた縁で希少種の保全や外来種対策の手伝いをさせて頂いた経験があるため、将来は自然環境の保全や生物の調査に関わる仕事をしてみたいと考えていました。そのような職を調べているうちに小笠原諸島や奄美大島などの日本各地で生物の保全や管理に関わる仕事をしている自然環境研究センター(自然研)のことを知り、どのような場所なのか見てみたいと思い、インターンシップに参加しました。インターンシップでは自分が自然研で働くとしたらどのような雰囲気の中で働くのか、また、受注する業務の一連の流れがどのようなものであるか考えて体験をしました。私は自然研のイメージは専門性の高い人が働いているイメージがあり、実際に職員の方の話を聞いていても、それぞれ様々な専門性を生かして働いているということが確かめられました。お話を伺うと、大学時代は今の担当の生物とは異なる生物を専攻していたが、今の担当生物での仕事も楽しいという意見も伺ったため生物そのものが好きな人が働いているなという印象を受け、自分も専門としている海藻だけでなく様々な生物に興味があるため、非常に親近感を感じました。また、今回のインターンシップでは同年代の他大学の方も参加していたため自然環境や生物に関する様々な考え方を専攻の違う立場から聞くことができたことも良いことであったと思います。将来の職や研究に関することを話し、自身の大学院での研究のモチベーションも得られました。今回、インターンシップを通じて、自然研の生物や自然に関する姿勢を職員の方や業務の見学・実習から多くを知ることができたため非常に良い体験だったと思います。そして、将来このような調査会社で働きたいという気持ちがより一層高まりました。

 

北海道大学大学院水産科学院1年

生き物に関わる仕事とはどのようなものか、また大学の研究とはどう違うのか、実際に体験したいという思いで参加させていただきました。
3日間のインターンシップを通して、自然研の業務は社会的ニーズに応じる形で行われており、同じ生き物相手でも学術的なアプローチにもとづく大学の研究とは大きく違っていることを実感しました。また、さまざまな立場の人々に対して専門的な知見を噛み砕いて説明し、内容を理解・納得してもらうコミュニケーション能力、専門性だけにとらわれない幅広い知識は、自分の足りない部分であると痛感し、仕事として生き物と関わる上で必要となるスキルや考え方について学ぶことができました。
この経験を、今後の研究活動や進路決定に役立ててまいります。どうもありがとうございました。

 

北海道大学大学院環境科学院1年

保全のための調査や対策が実務レベルでどのように行われているのかに興味があり,本インターンシップに参加しました。
所内での分析や野外での調査など実際の業務に関わることで普段の業務の様子をイメージすることができました。普段と異なる分野ということもあり,戸惑うこともありましたが,実際に業務に携わっている担当の方から業務のことや入社前の研究のことなど様々なお話を聞くことができました。調査の結果をどのように分かりやすく伝えるかということに注意を払っていらっしゃることが非常に印象に残りました.また,似た様な興味を持つ他分野の学生の方と意見交換ができたこともよい経験となりました。
これらをこれからの研究や将来の進路選択の際に生かせるとよいと思いました。3 日間大変お世話になりました。ありがとうございました。

 

 

2018年度インターンシップ(秋)

10月31日~11月2日の3日間、秋のインターンシップ研修を実施しました。今回は多くの応募者の中から6名に参加していただきました。

この研修は、当センターの社風や業務内容・方針を知ってもらうことと、環境保全に関する実践的知識やその解決に必要な考え方を身に付け、意欲を高めてもらうことを目的としています。

主な内容は、➀座学による鳥獣保護管理の現状(千葉県の事例)、外来種対策(小笠原諸島の事例)、②実習として、小笠原諸島におけるアノールトラップで非意図的に捕獲された昆虫類の同定、千葉県長生地域における獣類調査及び被害対策の視察、データ解析とその活用、③外来種対策を題材としたグループワーク、④インターンシップ全体をとおしたフィードバック等、盛り沢山でした。

短い期間でしたが自然環境に関する業務や環境保全のあり方等を学んでいただけたと思います。

 

➀座学

自然研の体制や業務内容、千葉県におけるシカ・イノシシの捕獲事業を事例とした大型哺乳類の保護管理、小笠原におけるアノール対策を事例とした外来種対策について、現場で活動する職員からの説明がありました。

 

写真:プロジェクト等の説明を受ける研修生

 

②実習

【外来種対策研修】

室内実習として、小笠原におけるグリーンアノール対策業務で回収されたアノールトラップを使って、非意図的に捕獲された昆虫類の同定作業を実施しました。顕微鏡や専門書、実際の標本を傍らに、本格的な分析作業の一端にも触れてもらえたと思います。この研修をとおして、外来種であるアノールを捕獲するには多くの在来種の犠牲が払われることを認識する一方で、そのデータを無駄にせず、捕獲された生物への影響を把握し、トラップを改善したり、保全に必要な情報を取得することもできることを体験してもらいました。

 

左写真:アノールトラップで捕獲された昆虫類のソーティング作業、右写真:昆虫類の同定作業

 

【野生鳥獣管理研修】

野外実習では千葉県をフィールドとして、自動撮影カメラと痕跡の確認によるイノシシ調査と被害対策現場の視察に関する研修を行いました。カメラ調査と痕跡調査の2つの手法をとおして、事業の目的に対してどのような調査手法を選択するべきか、調査の設計の考え方や現地での技術的な工夫、イノシシと他の動物との痕跡の見分け方について学びました。また、被害対策現場の視察では、電気柵を設置しただけで農作物の被害防止が出来るわけではなく、獣種の特徴に応じた柵の設置方法に工夫が必要なことや維持管理の重要性について、現場を視察することにより理解出来たと思います。実習翌日は、自動撮影カメラの画像によるデータ解析の研修を行いました。野外調査の現場実習から調査データの集計作業まで業務の一連の流れを体験してもらうことで、野外調査で得たデータをどのように野生動物の保護管理に活かすかについて、難しさや工夫の大切さを学んでもらえたかと思います。

 

左上写真:自動撮影カメラの設置実習、右上写真:イノシシの痕跡実習、左下写真:被害対策現場の視察、右下写真:執務室におけるデータ解析実習

 

③グループワーク

外来種対策をテーマとして、立場の異なる2班に分けて議論を行いました。議題1では、ペットとして移入され野生下で広がった外来種を対象に「野生下で捕獲した個体は駆除をする」、「野生下で捕獲した個体も駆除をしない」という2つの立場に分けて議論をしました。議題2では、生態系の中である程度ニッチが確立された外来種に対して「それでも外来種は根絶させる」「根絶はさせず生態系の一部に取り込み管理する」という2つの立場を設定しました。それぞれの議題に対して、グループでお互いの主張を議論し合うことで、外来種問題を扱う際には色々な意見があり、どのような対策を進めていくべきかといったことを考える難しさなどについて理解していただくことが出来たと思います。

 

左写真:外来種を題材とした背景や問題等の説明、右写真:それぞれのグループによる協議風景

 

④フィードバック

今回のインターンシップでは、哺乳類、爬虫類、魚類、昆虫類を対象とした生態学や保全学を専攻する方から、環境法などの法学を学ぶ方まで様々な分野の大学生・大学院生に集まっていただきました。そのため、3日間という短い期間ながら、様々な視点からの意見交換を行うことができました。

また研修生からは、自然研の業務を体験する事で、環境保全に関わる施策の策定から施行支援、事業の評価に至る一連の業務を理解できたことと、それを円滑に進めるための技術的な工夫やコミュニケーションの重要性、社会貢献への役割等の考え方に関する意見・感想が多く出されたのが印象的でした。

 

写真:研修に関するフィードバックの風景

 

参加者の声

 

日本大学生物資源科学部3年

業務を体験するだけでなく、なぜこの業務を行うのかという目的も教えて頂くことでより理解が深まったと思います。特に調査以外の業務については全く知らなかったので、発注からの流れや実際の仕様書の内容などを知ることで調査以外の業務の重要性を学びました。

また、職員の方々から多くのお話を聞くことで外来生物の駆除や生態系保全を行うことに対して視野を広げて考える大切さを学ぶことが出来ました。

今回学んだことや体験したことを今後の学生生活、研究に活かしていくだけでなく、将来生態系保全に関わるために何をすべきか考えたいと思いました。

 

青山学院大学法学部3年

日本の環境政策において科学的知見を提供し、行政との協働体制で重要な地位を担う自然研の業務を体験したく、今回のインターンシップに参加させて頂きました。

各事業がどのような流れで施行されているのかという実情を学び、自然研の環境政策への貢献度や関与する機会の多さ、存在意義というものを身をもって実感した3日間でした。

最前線の現場に携わる皆さんの姿勢からは多様な視点を持つこと、専門的高い意識を持つことという、環境と自然を相手にするにあたり求められる、人間的にとても大切なコアを学ばせてもらいました。そしてこの機会を通じ改めて、皆さんのように環境保全に対して真摯に向き合える人材になりたいという意志が自分の中で確信となりました。

 

東京農業大学地域環境科学部3年

今回のインターンシップは多くのことを学ぶことの出来た有意義なものになりました。千葉県長生地域でのシカ・イノシシ調査では大学での調査と異なり依頼されているものの為、行動一つ一つに伴う責任の重さがあることを学びました。小笠原の外来種問題ではただ外来種を駆除するだけではなく、その外来種と在来種との関係、また他の外来種との関係などその種を駆除後の環境の変化を考える。地域住民の方々の理解を得る等、多くの物事を考える必要があり、未来の予測・物事を多面的に見ることの重要性などを学びました。また今回体験した2つにも関係し最も必要なのはコミュニケーション能力だということも分かりました。

これらの学んだことを今後の大学での活動や自然環境の保全に関する社会貢献に役立てていきたいです。

 

法政大学人間環境学部3年

生物多様性を保全する活動について実践的に業務を体験し、専門知識を有する公的組織が果たす役割について理解を深めたいと思い、参加させていただきました。

外来種対策についての座学・実習では、トラップにおける在来種の混獲や、特定の種を駆除することによる生態系への予期せぬ影響など、この問題に取り組むことの難しさを実感しました。また、獣害対策についても、現地での調査やデータ解析実習などを通じ、より具体的な知見を得ることができました。3日間を通して、専門家の方々と接することはとても刺激になりましたし、保全活動を行う上で重要なことを多く学ぶことができたと感じています。

今回のインターンシップに参加したことで、将来は生物多様性保全に携わる職業に就きたいという思いがより強くなりました。

 

 

2018年度インターンシップ(夏)

8月22日~24日の3日間、夏のインターンシップを実施しました。参加者は5名で、いずれも学部3年生でした。

目的は、当センターにおける就業体験を通して、社風や業務内容・流れ等を知ってもらうことと、自然環境の保全に関してどのように社会貢献できるかを一緒に考えることです。そのためのプログラムは以下の通りでした。

 

1日目 所内研修

写真:対馬においてトラップで捕獲したスズメバチ科とミツバチ科の分析作業風景

対馬においてトラップで捕獲したスズメバチ科とミツバチ科の分析作業風景

  • ・オリエンテーション
  • (当センターの概要説明、参加目標の設定、業務の流れ)
  • ・所内見学
  • ・オリエンテーション(体験業務説明)
  • (シカ・イノシシ保護管理、対馬における外来種問題)
  • ・体験実習(ハチ類のソーティング)
  •  

    2日目 現地実習(千葉県長生地域)

    写真:イノシシの痕跡調査風景

    イノシシの痕跡調査風景

  • ・自動撮影カメラ設置状況視察
  • ・自動撮影カメラの設置実習
  • ・生息痕跡調査実習
  • ・農業被害対策地域視察
  •  

    3日目 所内研修

    写真:グループワーク風景

    グループワーク風景

  • ・書類作成実習
  • ・体験実習
  • (研究部執務室内における自動撮影カメラの画像解析作業他)
  • ・グループワーク
  • ・フィードバック
  •  

    参加者の声

     

    東海大学生物学部3年

    実習では色々な業務を体験させていただき、環境調査がどのように行われているのかをよく知ることが出来ました。

    特に、私は野外での調査に興味が集中しがちでしたが、フィールドワークだけでなく、その後のデータ分析などの地道な作業も、調査を行う上で大切であるということを学ぶことが出来ました。また、被害地の視察では職員の方から対策方法や地域の現状を聞き、自分の知識の足りなさを実感いたしました。それとともに、環境調査をする上でどのような知識や経験が必要なのかも分かり、大変勉強になりました。

    今回のインターンシップを通して、環境調査は非常にやりがいのある仕事だと感じるとともに、学生生活を送る上で良い刺激をもらうことが出来ました。

     

    東京農工大学農学部3年

    生態系保全に関わる職業を体験したいと思い、参加させていただきました。

    職場を見学させていただいたり、実際の業務を体験させていただいたりすることで、当然ですが参加前の想像よりもずっと具体的な就業イメージを掴むことができました。大変貴重な経験をさせていただきました。また、大学で現在学んでいることが業務と直結している部分もあるとわかり、より一層勉学に励みたいと思うようになりました。

     

    東海大学教養学部3年

    今回のインターンシップで、初めてイノシシの生息状況調査を行い、普段大学の研究室で行っている調査とは全然違うなと感じ、自然研が行っている調査について学べたことは、自分にとってとても有意義なインターンシップになりました。また、フィールドワークを自然研の人達が楽しく行っているのを見て、生き物が本当に大好きな人達なんだなと感じました。今回のインターンシップで学べたことを、今後活かせるようしたいと考えています。

     

    富山大学理学部3年

    インターンシップに参加して、自然研のように保全を仕事として関わることがどういうことなのか、大学で行う研究とどう違うのかと言った事を知ることが出来ました。

    例えば一連の業務について、動物による被害状況の調査研究をし、発表して終わりというわけではなく、そこから得られた結果を依頼元に報告し、また、対策を考え、地域への普及まで行うと言った点は大学の研究とは違う所だと感じました。他にも仕事には様々な生物種の様々な調査があり、それぞれについての専門的な知識が必要であると分かりました。特に長生地域でのフィールドワークでは、自分の知識や技術の未熟さを実感し、今後もっとフィールドに出て技術を磨く必要性を感じました。

    今回インターンシップに参加させて頂いて、今後の学生生活や研究活動を行う為の良い経験になっただけでなく、自身の将来就きたい職業、また、どのような形で保全に関わっていきたいのかを考える上でとても参考になりました。

     

    高知大学農林海洋科学部3年

    私は自然研のインターンシップに参加してみて、ここでの仕事は、実際に自然と向き合って行うものが多いと感じた。大学、また自分が好きで学んできた生き物の知識や経験を活かすことが出来るのだと感じた。

    また自然研の人たちは、生き物を学生時代から研究している人が多く、とても豊富な知識を持っていた。哺乳類だけではなく、他の分野の生き物を専門とする人も多く、まさに自然環境保全のプロ集団であると感じた。

     

     

    2021年度内定者の業務実習

    写真:筑波大大学院 博士前期課程

    実習期間と実習内容

    実習期間:2020年10月26日~29日

    内容:カメラトラップによるツキノワグマ生息状況調査

    体験実習の感想

    今回、ツキノワグマのモニタリング調査に同行させていただきました。群馬県の広範囲に設置された自動撮影カメラを回収する作業でしたが、私の修士研究と近い調査ということもあり、研究員の方との幅広い議論やお話を伺うことができました。ツキノワグマはこれまで馴染みがなく、実際に研究員の方と痕跡を見ながらの調査は非常に勉強になりました。実習を通して、私自身に経験や勉強が不足していると感じることも多々あり、入所後にいち早く貢献できるよう努力をしていかなくてはならないと思いました。また同時に、業務として調査にあたるに際し、これまで私が経験してきたものと異なる点を入所前に学ぶことができ、かねてからの目標であった野生動物管理に従事することがより現実味を帯び、より意欲が高まりました。

     

     

    2020年度内定者の業務実習

    写真:京都大学修士修了

    実習期間と実習内容

    実習期間:2019年10月15日~19日

    内容:ニホンジカの糞塊調査

    体験実習の感想

    石川県におけるニホンジカの糞塊調査に同行させていただきました。入所前に実際の調査を経験できる貴重な機会で、大変有意義な時間を過ごせました。実習を通して、現場で必要なスキルや考え方を学ぶとともに、今の自分に足りないものを考えていました。私は現場における知識や経験が乏しく、少しでも早く役に立つためには、入所後に経験を重ねて、積極的に学び、よりスキルアップしていかなければならないと痛感いたしました。まだまだ成長しなければならない点も多いですが、今回、実際の調査に参加し、先輩方からたくさんお話を聞いたことで、自然研なら自分の持ち味を活かし、自分がやりたかった仕事ができることを改めて実感し、モチベーションが上がりました。

     

     

    2019年度内定者の業務実習

    写真:岩手大学修士修了

    実習期間と実習内容

    実習期間:2018年11月9日~13日

    内容:渡り鳥飛来経路解明調査業務に
     かかるカモ類の捕獲及び送信機装着

    体験実習の感想

    実習では、渡り鳥の衛星追跡のための生体捕獲に従事しました。過去に類似の作業を経験したことはあったものの、今回の捕獲で用いた手法の中には初めて目にしたものもあり、技術的な部分で大変勉強になりました。将来的には自ら指揮をとって同様の現場をまわすであろうことから、研究員としてより一層の研鑽が必要だと感じました。また、空き時間には研究員の方々から業務内容や所内のことについて詳しくお話を伺いました。その中で、入所後は検討会などの事務局業務に少なからず従事することが想像されました。会議運営や連絡調整といった仕事は経験が浅いため、できるだけ早期に習熟するよう努めたいと思いました。今回の実習を通して能力的な課題がいくつか示され、今後の目標がさらに明確になりました。

     

    写真:東京農業大学修士課程

    実習期間と実習内容

    実習期間:2018年12月17日~21日

    内容:カモシカ定点観察

    体験実習の感想

    実習として、カモシカの定点観測調査を体験しました。野生動物の調査は、データを収集すること自体が難しいもので、自身がこれまで経験してきた植物の生態調査とのギャップを痛感しました。また野生生物の保全にあたって、データの地道な蓄積が非常に重要であるという事を今回改めて認識することができました。これにかかる現場での労力と努力は絶大で、野生生物を愛する者にしかできないことだと思います。そのことに誇りをもって、最前線で働いていきたいと思いました。

     

    2018年度内定者の業務実習

    写真:広島大学 修士課程

    実習期間と実習内容

    2017年8月21日~25日

    • ニホンジカ捕獲調査(くくりワナ)
    • ツキノワグマのヘア・トラップ調査
    • 室内業務(自動撮影カメラの画像解析作業)

    体験実習の感想

    大台ケ原においてクマのヘア・トラップ調査、シカの捕獲調査に同行しました。私はフィールドワークの経験がほとんどなかったため、実際、山を登って罠の見回りをすることは大変で、自分の未熟さを実感しました。しかし、職員の方の話を聞いたり、罠の設置に試行錯誤を重ねている取組姿勢を見たりすることは、とても刺激的でこれから活かしたいと思うことがたくさんありました。今回の実習を通して、自分をしっかりと見つめ直すことができたと感じています。

    写真:早稲田大学 修士課程

    実習期間と実習内容

    2017年10月31日~11月2日

    • カモシカ生息密度調査(区画法調査)

    体験実習の感想

    漠然と携わりたいお仕事や、お仕事を通して達成したい目標はあっても、実際にどのような能力や知識が必要であるのかと不安を感じていたので、今回の実習で、業務の中の調査からとりまとめまでの流れをみることができて勉強になりました。危険が伴う野外調査において、学生のアルバイトという立場と、職員の方と同じことをするかもしれないという立場では、責任の重さが大きく異なると感じました。就職の前に、自分の行動のひとつひとつに責任が生じるということを学べてよかったです。

    また、実習中に山の中でカモシカの親子を観察することができてとても嬉しかったです。生き物と向き合うことの責任感や緊張感を忘れずに働きたいと思いました。

     

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