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一般財団法人 自然環境研究センター

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ごあいさつ

理事長写真

一般財団法人 自然環境研究センター
理事長 三浦 愼悟

 

日本は南北3000キロメートルに及ぶ細長い弧状列島で,亜熱帯から寒帯までの気候帯に常緑広葉樹林から常緑針葉樹林・高山ツンドラまでの多彩な植物相が広がり,そこには5,000種を超える維管束植物が生育しています。そしてこの植物相を基盤に多様な動物相が成立しています。脊椎動物や昆虫類などの種数は,国土面積当たり換算すると世界でも屈指であり,同時に固有種の数も抜きん出ています。日本は,地球規模の生物多様性ホットスポットのひとつなのです。

この豊かな自然環境の中で人々は暮らしを営んできました。高度な土地利用と旺盛な経済活動によって日本は先進国の仲間入りを果たしてきましたが,その一方で,生物多様性や自然環境も傷つけられてきました。開発による生息地の破壊,乱獲による生物資源の枯渇,グローバル経済による外来種の侵入と増加など。危機はそれに止まりません。人口減少と少子高齢化は,人間活動の低下を招き,人と結びついてきた自然をかえって劣化させたり,他方では大型哺乳類や外来種の分布を拡大させ,農林業に深刻な被害を発生させています。私たちはこの困難な課題に立ち向かわなければなりません。

生物学の歴史は,個々の生物の興味深い生活誌を記述する自然史(Natural History)から出発し,その後に分類学や解剖学,生理学や生態学などが生まれ,現代の生物学の体系がつくられてきました。そして20世紀末には,この生物学を基礎に,生物多様性の保全や野生動物との共生を目指した保全生物学(Conservation Biology)や野生動物管理学(Wildlife Management)が生まれるようになりました。生物多様性の保全や希少種の保護,外来生物の排除や加害動物の管理には,これら研究分野を適用し,発展させていかなければなりません。

自然環境研究センターは,人間社会と自然,野生動物との共存・共生を理念に1978年に設立されました。以来,この分野のパイオニアとして,つねに自然科学と政策科学を結びつけることを目標に,各種の生態系,自然遺産地域や多様な生物種を対象に調査研究を積み重ね,情報の収集・整理や提供を進めてきました。同時に,これらの分野に関わる国際協力や人材育成などの事業にも参画してきました。今後もこれらの活動をますます充実・発展させて,豊かな生物多様性と貴重な自然環境を次世代へとバトンタッチすることを念願してやみません。

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